【サピックス・2024夏期マンスリー確認テスト】6年生・国語[大問4]物語文の記述問題解説

2024年8月実施、 サピックス6年生「夏期マンスリー確認テスト」の物語文を解説します。

今回の物語は『17シーズン 巡るふたりの五七五』(著:百舌涼一)
主人公の音々と天神くん、対照的な登場人物の心情を読みとることができたでしょうか。
今回は、記述問題の(問6)と(問7)を詳しく解説します。

文章の概要

あらすじ

音々(ねね)は、体育祭のスローガンを書いたことがきっかけで、クラスの注目を集めます。そして、そのスローガンが天神くんに評価され、彼から句会に誘われます。天神くんとの関わりあい、音々は自分が無意識に川柳のリズムに影響を受け続けていることに気づき、徐々に心を開いていく様子が描かれています。

登場人物とその特徴

  • 音々(松尾音々): 内向的で、他人とのコミュニケーションが苦手。しかし、人間観察が好きで、物事を静かに見つめる冷静さがあります。また、文章を書くことで気持ちを整理する習慣を持ってそこからも、内面的な世界が豊かだと考えられます。
  • 天神くん(天神至) : クラスの人気者で学級委員を務め、学年トップの成績を堅実に優等生。 しかし、表面的にはクールで冷静に見えながら、実際には俳句や川柳に対して情熱を持つ繊細な一面を隠しています。

難しい言葉・重要語句の解説

  • 青い春(あおいはる):青春。若い時代。人生の春にたとえられる時期。
  • 図星(ずぼし):人の指摘などが、あさにその通りであること。
  • 目の奥(おく)には:表情とは異なり、心の中では別の感情がある様子。「目の奥は笑っていない」などと使われる。

主人公の心情変化

物語の中で、音々は初め、天神くんからの突然の依頼に戸惑い、コミュニケーションが苦手なため彼を避けようとします。しかし、夜のコンビニでの偶然の出会いを通じて、天神くんの俳句や川柳への情熱に触れ、彼との会話に引き込まれていきます。天神くんが音々の観察力や感性を認めてくれたことで、音々は次第に心を開き始めます。

記述問題 問6・問7の解説

(問6)記述問題 ―線⑥「なぜ初めて来た公民館で、初めて句会なるものを見学していて、隣にクラスメートの天神くんまで座っているのに笑ったりできるのだろう」とありますが、なぜだと音々は考えましたか。

■問題文で(問われていること)を確認する
この問題で(問われていること)は「なぜだと音々は考えましたか」という部分です。「なぜ」と問われている場合には、「~だから」と理由を答えます。まずは、音々が笑っている理由を読みとっていくことが大切です。


■音々の人物像に注目する
(問われていること)に答えるため、音々がどのような人物であるか考えていきましょう。音々はほとんど笑わない人物であることが、本文中から読みとれます。

  • (P10・1行目)いつも教室の端っこでひとりぼっちですごしている自分(音々)が・・・
  • (P12・1行目)「あ、笑った。僕、松尾さん(音々)が笑うの初めて見たかも」
  • (P12・2行目)音々自身、この前いつ人前で笑ったか思い出せないし。
  • (P13・2行目)音々も自分のことながら不思議だった。家族の前でもこんなに笑うことなどない。
  • (P13・4行目)音々は自分で自分が信じられなかった。

このように、いつもひとりぼっちで、自分でも笑っていることが信じられないような人物です。そんな音々が笑うということがどれほど大きな変化なのか、実感させていくことが大切です。

音々のような人物が笑うようになるにはどのようなきっかけがあるのか、お子さんと一緒に話し合ってみましょう。


■音々が笑った理由を考える
―線部の理由は、―線部の前後に書かれています。笑っている理由を探していくので、プラス心情になっているところに注目しましょう。―線⑥の直後の文にプラス心情が書かれています。

ここは、学校でも家でもない。ほとんどが年上のひとたち。それも、本名を知らなくても平気な、不思議なつながりで集まったひとたち。その、「いつもの場所ではない」ということが、音々にとっては、緊張よりも、安心につながっているのかもしれない。

つまり、学校でも家でもない、知らない人たちばかりの空間が、音々にとっては安心できる場所になっています。そんな場所だったからこそ、笑顔になることができたと考えられます。

心情がわかるところに線を引き、プラスやマイナスを書きこんでおきましょう。重要な心情表現に、すぐに注目することができます。


さらに(P13・9行目)「ただ、それだけではない気が、音々にはしていた」と書かれています。もう一つの理由を読みとっていきましょう。

  • (P13・15行目)この十七音のせいかもしれないと音々は思った。
  • (P13・17行目)もしかしたら音々は、気づかないところで「五七五」の影響を強く受けていたのかもしれない。
  • (P13・21行目)そんな短くも印象的な十七音に、音々はいつの間にか惹かれていたのだ、きっと。
  • (P13・22行目)ここにいるひとたちは、俳句という十七音をとても大事にしている。その事実が音々にほんのりとした仲間意識を芽生えさせ、落ち着かせているのだろうか。

音々が安心して句会に参加できているのは、十七音の魅力によるものだと考えていることがわかります。音々は、句会に参加する以前から、十七音に影響を受けていたことに気づきます。そんな十七音の魅力を、参加している人たちと共有できる空間だからこそ、音々は笑うことができたのです。


■理由をまとめて記述を完成させる
このように考えると、音々が笑っている理由は2つ考えられます。
[理由①]知らない人たちばかりで安心できたから
[理由②]十七音の魅力でつながる仲間意識が芽生えたから

「記述の核」をつくる
「記述の核」とは、(問われていること)に対するできるだけ短い答えです。音々が笑っているのは「なぜ」かという問いに、できるだけ短く答えを考えます。「記述の核」は安心できたからでしょう。自分を知っている人たちがいる空間では、自分の感情を素直に表現することができなかった音々ですが、知らない人たちばかりの空間で、自分も魅力を感じている俳句でつながっているという仲間意識が芽生え、安心できたから笑うことができたのです。

この「記述の核」を、記述の文末に配置します。そして、この解答の核に、上記で述べた理由をつけたして解答を完成させていきましょう。

[正答]
句会に参加している人は、知らない人だからこそ緊張しなくても済み、しかもいつの間にか自分自身が惹かれていた十七音の魅力を共有できる人たちなので、親しみを覚え、安心できたから。(解答と解説より引用)


本文中の言葉を使うと、以下のような解答も考えられます。参考にしてみてください。

句会は知らない人たちばかりが集まっている場所であり、自分自身も惹かれている俳句を大切にしている人たちに仲間意識のようなものが芽生えてきて、安心できたから。

(問7)記述問題 2つの~線部の音々のセリフに注目し、空欄⑦にあてはまる言葉を考え、二十字以内で答えなさい。

■2つのセリフの指示語を明確にする
まずは2つの~線部のセリフを確認してみましょう。
「その流れ、スローガンのと似てる気が…」「そんなこと、思ったこともなかったな」という音々のセリフです。このように、「その流れ」「そんなこと」という指示語がどちらの選択肢にもあります。問題となっている文の指示語は、指し示しているものを明確することが大切です。

どちらのセリフにも指示語があるので、問題作成者は指示語が読みとれているか確かめるために問題をつくっていると思われます。

2つのセリフの指示語をそれぞれ読みとっていくと、以下のようになります。
「その流れ」→句会で良い句を選んだり評価したりする流れのこと
「そんなこと」→音々に表現したい気持ちがあること

つまり、どちらの指示語も、音々が経験していたり、自分自身のことであったりするにも関わらず、気づかなかったことを指しています。よって、2つのセリフは、音々が自分のことなのに気づかなかったことに初めて気づいた時のセリフなのです。


■音々が「初めて気づいた」ところを本文から探す
上記で述べたように、音々が「気づかなかったことに初めて気づいた」ところを、本文から探していきましょう。(問6)でも触れたように、音々はいつの間にか十七音の魅力に惹かれていたことがあげられます。
(P13・11行目~)本文をもう一度注意深く読み、音々が「初めて気づいた」ところを、お子さんと一緒に探してみてください。以下の文に気づくことができたでしょうか?

(P13・15行目)さっき、天神くんに質問したときも無意識に十七音になっていることに気づく。

「さっき、天神くんに質問したとき」という質問が、~線部の「その流れ、スローガンのと似てる気が…」というセリフのことを指していることにも気づくことができれば完璧です。

さらに、もう一つの~線部のセリフ「その流れ、スローガンのと似てる気が…」も十七音になっていることにも気づくはずです。(P13・15行目)の文を手がかりに、空欄⑦に文を入れましょう。


■空欄⑦に合うように記述する
天神くんのセリフ「そう。その[ ⑦ ]感じ」にあてはまる言葉を考えなければいけません。先ほど触れた(P13・15行目)の文から、音々が意識していないのに十七音で話していたことに、天神くんが気づいた時のセリフになるようにあてはめていきましょう。

[正答] 五・七・五のリズムが自然に出る(原文)


本文中の言葉を入れると、以下のような解答も考えられます。

  • 無意識に十七音になっている(13字)
  • 無意識に五・七・五になっている(15字)

参考にしてみてください。

サピックス夏期マンスリー 物語文の記述問題まとめ

今回の記述問題はどうだったでしょうか。
自分を表現することが苦手な女の子が、俳句によって心を開いていく場面が問題となっていますね。僕自身、趣味で絵を描いているので、絵で自分を表現できるようになった喜びは、音々の気持ちに共感する部分がありました。

また、音々が心を開くきっかけとなった天神くんのような存在にも、大人なら共感できる部分が大きかったのではないでしょうか。「この人との出会いで人生が変わった」と思えるような存在に、お子さんは出会ったことがあるでしょうか。まだ小学生では経験していないかもしれませんね。そんな時は、親御さんの経験を話してあげてください。きっと、お子さんの胸に響くものがあるはずです。

物語の主題となるテーマについて親子で話をすることは、お子さんが思考の幅を広げるために、とても有効な学習です。ぜひ話をしてみてください!

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