【2024】学校別サピックスオープンテスト(開成) 国語[大問2]物語文の難問を解説

2024年9月16日実施、 学校別サピックスオープンテスト(開成)の物語文を解説します。

今回の物語は『水やりはいつも深夜だけど』より「ちらめくポーチュラカ」(著:窪美澄)
セレブママとしてブログを書き、ママ友からの評価を気にしながら生活している主婦の物語です。小学生には想像しにくく(特に男子)、苦労した子も多かったのではないでしょうか。

文章の概要

あらすじ

主人公である「私」が、結婚し子どもを持ち、幼稚園に通わせる生活の中で、過去のいじめのトラウマを引きずりながらも、母親としての役割に奮闘する姿を描いています。幼少期に受けたいじめから逃れたつもりでも、再び「女の世界」に戻り、ママ友たちの中で再び自分を守ろうとする葛藤を描いています。物語の中盤では、過去のトラウマと現在の人間関係の狭間で揺れ動く主人公が、最終的に自分自身のあり方を見つめ直す姿が描かれます。

登場人物とその特徴

  • 「私」(杉崎):主人公であり、過去にいじめを受けた経験を持つ女性。現在は結婚し、息子の有君を育てるが、ママ友たちとの付き合いに悩み続けています。
  • 宗君:「私」の夫。
  • 有君:主人公の息子。子どもらしい純粋さと友だちとの関係を大切にする姿勢を持っています。
  • 甲斐さん:コンビニの店員で、主人公が過去にいじめられたMと似た人物。彼女との関わりが主人公の気持ちに変化を起こします。
  • 拓斗君:甲斐さんの息子で、有君の友だち。しばしば乱暴な行動を見せ、他の子どもたちにトラブルを引き起こしますが、悪意があるわけではなく、子どもらしい無邪気さを持っています。
  • 佐々木さん:有君の友だちのお母さんで、ママ友の一人。気さくで社交的な性格ですが、陰では他のママたちと一緒に噂話に加わることもあります。彼女との関わりが、主人公にとってママ友付き合いの難しさを象徴する存在です。

たくさん登場人物がでてくるので、チェックして整理しましょう。

難しい言葉・重要語句の解説

  • ママ友: 幼稚園や学校で知り合った母親同士の友だち。親同士の付き合いを指します。
  • ポーチュラカ: 太陽の光が強い中でも育つ強い花です。物語の中盤とラストにポーチュラカの描写がでてきており、タイトルも「ちらめくポーチュラカ」であることから、物語を象徴する植物であることがわかります。ポーチュラカの強さが、ママ友と新たに関係を築いていこうとする主人公の強さと重なっています。とても重要な部分なので、必ずおさえておきましょう。
  • 決壊(けっかい): ダムや川の堤防(ていぼう)が壊れて水があふれ出すこと。ここでは、主人公の感情が抑えきれずに外に出そうになる様子を指しています。
  • 矛先(ほこさき): 攻撃や批判が向かう方向。たとえば、誰かが批判の対象になるとき、その「対象」や「相手」を意味します。物語では、ママたちの話の対象が変わっていく場面で使われています。
  • ボサノバ: ブラジル発祥の音楽のジャンル。リズムがゆったりとしており、リラックスした雰囲気を醸し出す音楽です。
  • 直訴(じきそ): 普通は言えないことを、直接相手に訴えること。例えば、問題があるときにその責任者に直接話すことを指します。
  • 所在なく(しょざいなく): 自分のやることがなく、落ち着かない状態や、どうしていいかわからない気持ちを表します。何をすればよいのかわからず、困っている状況です。
  • 虚栄心(きょえいしん): 本当の自分を隠して、他人に良く見せようとする気持ち。例えば、他の人に褒められたいから、自分を実際以上に立派に見せようとすることです。[対義語]謙虚
  • 揚げ餅(あげもち): 餅を油で揚げたお菓子。お餅をカリッと揚げて塩や醤油をつけて食べる、昔ながらの素朴なおやつです。

主人公の心情変化

物語を通じて、主人公の心情は複雑に変化していきます。最初はママ友の世界に適応するため、ブログやSNSで他人に好かれる「自分」を演じ、その反応に一時的な満足感を得ていましたが、次第にその虚しさに気付きます。甲斐さんとの出会いで、飾らない生活や人間関係の温かさに触れ、ネット上で築いた虚構の世界の儚さを実感します。また、息子・有君の純粋さに影響され、自分の弱さや傷を受け入れつつ、前向きに生きようとする意識へと成長していきます。

記述問題 問1~問4の解説

(問1) ―1「また同じ場所にいた」とはどういうことか、説明しなさい。

■問題文で(問われていること)を確認する
この問題で(問われていること)は「どういうことか」という部分です。「どういうことか」と問われているので「~ということ」と解答します。主人公が「同じ場所」とは何を指しているのか明確にして、問われていることに明確に答えられるようにしていきましょう。


■「同じ場所」とは何かを明確にする
―線部の内容を考える時には、[―線部を含む一文]全てを注意深く読みとっていく必要があります。

[―線部を含む一文]
逃げて、逃げて、そこから逃げ出したはずなのに、私はまた同じ場所にいた。

このように、一文すべてに注目すると「そこから」という指示語があることに気づきます。重要な一文に指示語がある場合には、必ず指示語が指し示す内容を明確にしましょう。主人公はどこから逃げていたのでしょうか?あてはまる言葉を―線部より前から探していくと、―線部の1行前に、『私は再び「女の世界」で生きていかなくちゃいけないとうことだった。』とあります。主人公は「女の世界」から逃げ出したはずなのに、また「女の世界」にいると考えることができるのです。よって、「そこから」が指すものは「女の世界」であり、―線部の「同じ場所」も「女の世界」を指していると読みとることができるのです。


■「女の世界」とはどのような世界か読みとり記述の核をつくる
では、「女の世界」とは具体的にどのような世界なのか、読みとっていきましょう。―線部の2行後の記述があります。

女たちに嫌われない練習をする必要があった。嫌われない女、ほかのママたちに嫌われないママのイメージ、その輪郭を私はネットから学んだ。多くは芸能人のブログだった。ファッション、メイク、食事。何を言えば好かれるのか、何を見せれば嫌われるのか、 私は彼女たちがアップする写真や言葉を学習し続けた。

主人公がほかのママ友に嫌われないため、相当な努力をしていることが読みとれます。主人公は、女同士の人間観関係を気にする生活から逃れてきたのに、結局「同じ場所」にいたのです。この問題では「また同じ場所にいた」とは「どういうことか」と問われているので、女たちに嫌われないよう気を使う生活にもどってしまったことと答えればよさそうです。

これを記述の核として、記述を完成させていきましょう。

■「記述の核」に文をつけ加えて完成させる
女たちに嫌われないよう気を使う生活にもどってしまったことという記述の核が完成しましたが、これだけでは説明が不十分です。前半に文をつけ加えて、記述を完成させましょう。

つけ加える文は ①対比 ②原因 ③説明 のどれかを、状況によって選択しましょう。
対比 → 2つのものを比較する書き方です。「○○だったが」
原因 → (記述の核)の原因を記述します。「○○だから」
説明 → (記述の核)を詳しくする文をつけ足します。「○○なほど」「○○くらい」

今回は、②原因を記述するとうまくいきそうです。主人公が女たちに嫌われないようにしているのは、中学生の時のようにいじめられないためですので、記述の核の前半につけ加えましょう。

[正答]
中学生の頃と同じように、まわりの女の人に嫌われないように、自分を演じる必要がある環境にいること。(解答より引用)


以下のような解答も考えられます。参考にしてみてください。

中学生の時のようにいじめられないため、女の人に嫌われないよう気を使う生活にもどってしまったこと。

(問2) ―2「小さい子どもがいるうちはさ、なんかゆっくり接してあげたいじゃん」とありますが、これを聞いた「私」はどのような気持ちになりましたか。説明しなさい。

■問題文で(問われていること)を確認する
先ほどと同じように(問われていること)を確認します。「どのような気持ちになりましたか」と問われているので、「~な気持ち」と解答します。気持ちを問われているので、心情に注目することが大切ですね。


■―線部周辺の心情を読みとり記述の核をつくる
心情を読みとるため、―線部周辺を注意深く読んでいきましょう。

[ママ友の心情]
まずは、―線部のセリフを言っているママ友の心情を読みとっていきます。

①「去年、拓斗君のパパが勤めてた会社が倒産したらしくて・・・・・・神社のそばにある公園の池のベンチでときどき缶ビールのんでるの見てるんだよね・・・・・・
②「でも、保育園のママって、なんか余裕ない感じだよね・・・・・・
 話の矛先がまた変わった。
③「小さい子どもがいるうちはさ、なんかゆっくり接してあげたじゃん
 バスを待っていると、目の前の道をこれから保育園に行くらしいママたちが自転車に子どもを乗せて通り過ぎることがある。自転車のカゴには、子どもの荷物を入れて丸くふくらんだ布製のバッグを入れ、険しい顔をして走り去って行く。時には、うしろの席で子どもが大声で泣いていることもあった。でも、仕事をしていない私だってあんな顔をよくしているんじゃないだろうか。

①~③のセリフは、どれもママ友のセリフですが、どれもマイナス心情が読みとれます。①のセリフの「・・・・・・」からは、拓斗君のお父さんに対するマイナス心情が読みとれます。①の前のセリフでは、拓斗君のお母さんに対するマイナス心情が読みとれます。いずれも心配しているのではなく、乱暴者の拓斗君の両親ごと批判する心情です。それは、矛先という言葉からわかります。矛とは、長い柄の先に両刃をとりつけた武器です。①のセリフから、ママ友の攻撃が拓斗君とその両親に向いていることがわかります。
では、「話の矛先が変わった」とありますが、②と③のセリフは誰に対する攻撃なのでしょうか?保育園のママに対する批判ですが、「険しい顔をして忙しそうに自転車で子どもを連れて行っている」ママを批判しているセリフであると読みとれます。

[主人公の心情]
では、いよいよ問題となっている主人公の心情を読みとっていきましょう。上記でママ友が、忙しそうにしている保育園のママを批判していることを確認しました。そのセリフを聞いて、主人公がどのような心情になっているのでしょうか。「でも、仕事をしていない私だってあんな顔をよくしているんじゃないだろうか。」と、ママ友が批判している保育園のママのように自分もなっているのではないだろうかと、不安になっている心情が読みとれます。

このことから、記述の核を考えていきましょう。この問題では「どのような気持ちになりましたか」と問われているので、不安な気持ちになっていると解答すればよいことをおさえておきましょう。よって記述の核は「自分も悪く言われているのではないかと不安な気持ちになっている」とすればよいでしょう。


■「記述の核」に文をつけ加えて完成させる
記述の核が設定できたので、その前半につけ加える文を考えます。(問1)と同じように ①対比 ②原因 ③説明 のどれかをつけ加えますが、今回も②原因で良いでしょう。
上記で述べたように、主人公が不安な気持ちになった原因は、「自分も険しい顔で忙しそうに子育てをしているから」です。これを前半につけ足して記述を完成させましょう。

[正答]
幼稚園のママたちの非難が、ゆとりのないようすで子育てをする保育園のママたちと似ている自分に向けられているように感じられて、つらくなっている。(解答から引用)


以下のような解答も考えられます。参考にしてみてください。

「私」も険しい顔で忙しそうに子育てをしているから、自分もママ友から悪く思われているのではないかと不安な気持ちになっている。

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