「成瀬」の魅力に引きこまれていく作品
本:『成瀬は天下を取りに行く』(宮島未奈・著/新潮社)とは?
この作品は、R-18新人賞の3冠を史上初めて達成しており、デビュー前から異例の注目を集めていたことでも知られています。個性的な少女(成瀬あかり)の中学2年生から高校3年生までの日々がつづられています。おもな舞台は実在する進学校の滋賀県立膳所高校です。
破天荒な成瀬あかりの行動に、周囲の人は巻き込まれていきます。しかし、成瀬の不思議な魅力に、関わった人たちはどんどん惹きつけられていくのです。自分のやりたいことを納得するまで実行する成瀬の姿に「こんな生き方をしてみたい」と思う読者は多いはず。
小学校高学年でも読みやすい内容なので、お子さんにもおすすめです。
笑いあり、涙あり、読み終わった後にはきっと成瀬のファンになっているはずです。
成瀬あかりの名言[5選]
「この夏を西武に捧げようと思う」
本書冒頭に、主人公の成瀬あかりが親友の島崎みゆきに対して言った言葉。
成瀬たちの住む滋賀県大津市の唯一のデパートである西武大津店が、44年間の歴史に幕を閉じることが決まります。地元テレビ局が毎日西武大津店から生中継をすることになっており、成瀬はそれに毎日映り込むというのです。
この、突然の突拍子も無い一言が成瀬らしくて、彼女の性格や人間性を表しているとも言えます。
「暗くて寒かったら、今頃もっと寂しいから」
物語の終盤、成瀬は今まで島崎に言っていなかった毎日デパートに通っていた理由を伝えました。
成瀬の思いつきだと思っていたことが、実は成瀬の大切な人を想っての行動であることが分かりました。
この発言も、成瀬の優しい心を表している素敵な言葉だと感じました。
『カタカナで「ゼゼカラ」』
成瀬の思いつきから、島崎と2人でM-1グランプリに出場することになりました。
上記は、コンビ名が『ゼゼカラ』に決まった場面です。
女子中学生で、突然M-1グランプリに出場しようと考えた成瀬もすごいですが、それに付き合って実際に出場した島崎もすごいですよね。2人はとてもいいコンビです。
「通常より二秒遅い。」
親友の島崎から伝えられたある言葉をきっかけに、成瀬は不調に陥ってしまう。
目覚まし時計のアラームで目覚めたが、通常より二秒遅く、それを皮切りに不調が続いてしまう。
今まで、当たり前に近くにいた島崎という存在が、成瀬にとっては如何に大切だったか分かる場面ですね。
「成瀬と一緒ならできると思ったからやってきたの」
これは、成瀬の親友、島崎の言葉です。
成瀬は、いつも自分に振り回されていないか、不安になったとき、島崎は気持ちを伝えます。
島崎の成瀬に対する気持ちが伝わり、心が温かくなる場面です。
2024年度 中学受験で多くの学校が出題
栄東(埼玉)
成瀬たちが高1のときに足を運んだ東京大学のオープンキャンパスの場面を取り上げました。
成瀬と大貫が一緒に西武デパートを訪れた場面で、二人の会話文の内容としてふさわしいものを選択肢から選ぶ問題が出題されました。
また、成瀬が「花火大会くらい人がいたな」と言った場面で、大貫が感じた気持ちを記述する問題もありました。
豊島岡女子学園(東京)
高3の場面と、回想としてオープンキャンパスの場面を引用しました。時期が異なる二つの文章から、共通する思いを選ばせる問題が出題されました。前半と後半の文章を見比べて解答する問題であったため難易度が高く、正答率が低かったようです。
豊島岡女子学園の入試問題については、以下の記事で詳しく解説しています。
↓↓ぜひ参考にしてみてください。
このように、中学受験でも取りあつかわれた話題作「成瀬は天下を取りに行く」を、ぜひ読んでみてください。
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