【2024】四谷大塚「第4回合不合判定テスト」国語・説明文[大問2]を解説

四谷大塚「第4回合不合判定テスト」
今回の説明文は『武器としての土着思考 僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』(著:青木真兵)

現代社会における人口減少の問題を中心に、都市と過疎地域での生活の違いを論じています。筆者は自身の経験をもとにこれからの社会の在り方を語っており、正しく読みとるには現代社会に対する知見が求められます。難しい内容は補足してあげましょう。

文章の概要

要約

奈良県東吉野村での生活を例に挙げ、筆者は都市の「息苦しさ」を人口過密が原因とし、山村ではその「息苦しさ」が緩和されたと述べています。都市では激しい競争があり、人間は常に優れたキャリアを求められますが、山村ではそれほど多くの役割が求められず、存在していること自体が重要であると感じたと述べています。また、筆者は人口減少社会のデザインについて述べ、都市と村の原理の違いを強調しています。今後は、生産性だけでなく、社会全体を支えるために村的な価値観が必要だと述べています。

筆者の主張や考えが表れている文

筆者の主張や考えが表れている文は、以下のような文が挙げられます。本文に線を引けているか、確認してみてください。

  • (12行目~)僕たちが感じていた都市での息苦しさは、あえて単純化すると人口が過密だったことに由来するのではないか。そんなふうに感じています。
  • (22行目~)一方、過疎の山村ではそもそも人がいない。人がいない社会でにな はどうにかして社会を回す担い手を求めています。
  • (31行目~)つまり、こう言ってよければ、都市は買い手市場なのに対して、農村は売り手市場なのです。
  • (41行目~)しかし、僕はどちらがよくてどちらが悪いとは考えていません。なぜなら、今までの人口増加社会が生産性を追い求め、そのために環境問題や社会問題などを置き去りにすることで成り立っていたからです。つまり都市の原理に偏りすぎていたことが、大きな問題だと思うのてす
  • (48行目~)しかし、現在でも日本社会は人口の増加を前提としたモデルを採用してはいないてしょうか。
  • (52行目~)人口が減っている現状にもかかわらず、人口が増えている社会のやり方しか知らない僕たちは、手段と目的のくい違いを自覚しなければなりません
  • (71行目~)しかし、この自由な社会こそ、明治以降だけでなく、有史以来日本という環境に暮らしてきた人間が経験したことのない状態です。だからこそ、僕はその「ロールモデル〔=考え方や行動の手本になる人物〕」が必要だと思っています
  • (81行目~)つまり一つの社会システムの中でだけ生きていこうとするのではなく、「む、これは人口増加社会のシステムを押しつけてきているな」と感じたら、すぐに逃げ出す。もしくは真面目に取り合わないことが重要です
  • (96行目~)つまり社会を担う世代の人口が減っていくことです。
  • (105行目~)さらに自分も含めてしている最も大きな勘違いは、今まで人口増加社会を生きてきた人びとが、人口減少社会においても今までと同じ生活を続けられると思っていることです。
  • (110行目~)だからこそ、僕たちのような人口増加社会に生まれた人間が広井の『人口減少社会のデザイン』を読まねばならない理由は、「若者の邪魔をしないため」なのです
  • (116行目~)僕は大人たちが人口減少社会をデザインするのだと考えると、本質を見誤ると思っていますそうではなく、今後こういうデザインで社会構想されていくので邪魔しないようにしよう、という共通認識を持つことが必要なのです

黄色マーカーは、注目すべき接続義につけています。
しかし」「一方」などの対比表現は、前の文もあわせて線を引きましょう。対比表現以降に、筆者の言いたいことが書かれている場合が多いです。
さらに」は添加の接続語です。添加とは、後からつけ加える時に使われる表現です。前の段落で述べられている主張に、どのような主張がつけ加えられているのか、注目しながら読んでいきましょう。
つまり」の後には抽象表現(まとめ)があることが多いので、線を引きましょう。
そうではなく」は打消し表現です。打消し表現の後に重要な内容が書かれている場合が多いです。

赤色マーカーは、文末表現につけています。
また、「必要」「重要」「~しなければなりません」などの文末表現に注目しましょう。このような文末表現が使われている文には、筆者の考えが書かれている場合が多いです。

難しい語句の解説

  1. 地縁、血縁(ちえん、けつえん)コミュニティー: 地域や血縁で結びついた社会関係を指す言葉。都市では希薄になりがちだが、村では強固な関係が残っています。
  2. 緩和(かんわ):厳しさや問題を和らげて、軽くすること。例えば、ストレスや規制の緩和といった具合に、緊張や負担を減らす意味で使われます。
  3. キャリア:個人が積み重ねてきた仕事の経験や、職業上の経歴を指します。「キャリアを積む」といった表現で、専門的なスキルや実績を積み上げることを意味します。
  4. 苛烈(かれつ):非常に激しく厳しい様子を指します。ここでは、競争が非常に厳しい状況や、過酷な状況を表しています。
  5. 過疎(かそ): 人口が非常に少ないこと。特に地方の山村でよく使われる言葉です。
  6. 第3次産業的能力(だいさんじさんぎょうてきのうりょく):サービス業や情報産業など、第3次産業に求められる能力を指します。具体的には、顧客対応、創造的な思考、情報処理能力などです。
  7. 論理的思考(ろんりてきしこう):筋道を立てて考えること。問題や状況に対して、原因と結果を明確にし、結論を導き出す合理的な考え方を指します。
  8. 非論理的(ひろんりてき):論理的ではないこと。筋道が通らず、感情や直感に頼った考え方や行動を指します。
  9. 遵守(じゅんしゅ):決められたルールや法律、規則を守ること。「法律を遵守する」というように、規定された内容に従う意味です。
  10. 多様性(たようせい):異なる考え方、価値観、文化、背景などが共存していること。社会や組織において、様々な違いを認め、受け入れることを意味します。
  11. 同調圧力(どうちょうあつりょく):集団の中で、多数派の意見や行動に合わせるよう無言の圧力をかけること。異なる意見や行動を取りづらくする力を指します。
  12. 一億総中流社会(いちおくそうちゅうりゅうしゃかい):日本の高度経済成長期に広まった概念で、国民のほとんどが中流階級に属していると感じられた時代のこと。経済的な格差が少なく、多くの人が似たような生活水準を享受していた社会です。
  13. 生産年齢人口(せいさんねんれいじんこう):一般的に、労働可能とされる15歳から64歳までの年齢層の人々を指します。経済活動に従事することができる世代であり、社会を支える労働力とされています。
  14. 社会保障費(しゃかいほしょうひ):年金、医療、介護など、国民の生活を保障するために国や自治体が支払う費用を指します。高齢化が進むと、この費用が増大する傾向があります。
  15. 不均衡状態(ふきんこうじょうたい):バランスが取れていない状態。需要と供給、あるいは負担と支えのバランスが崩れている状況を指します。
  16. 起因(きいん):何かが原因となって、他の事象が発生すること。「〇〇に起因する」という形で、ある問題や結果の原因を示す表現です。

難しい語句が多いので、社会情勢の変化と合わせて、解説してあげましょう。

重要問題解説[問3][問5]

今回は、本文中の語句の意味が理解しづらい[問3]、「人口減少社会」について説明する記述問題[問5]を解説していきます。

[問3]ー線②「都市は買い手市場なのに対して、農村は売り手市場なのです」とありますが、本文における、A「買い手市場」、B「売り手市場」の意味の説明として適切なものを次からそれぞれ選び、記号で答えなさい。

■問題文で(問われていること)を確認する
この問題は、A「買い手市場」、B「売り手市場」の意味の説明として正しいものを選ぶ問題です。―線②に「都市は買い手市場」、「農村は売り手市場」とあるので、都市と農村の特徴からおさえていきましょう。


■都市と農村の特徴をおさえる
都市と農村の特徴をそれぞれまとめると、以下のようになります。

【都市の特徴】

  • 人口が過密:人口密度が高く、競争が激しい。
  • 就職活動の競争:限られた仕事をめぐって、苛烈な競争が行われている。
  • 優れたキャリアを目指す:他人に勝つか負けるかの競争原理が社会の中心にある。
  • 高い生産性が求められる:都市では高度な第3次産業的能力が必要とされる。
  • 論理的思考が重視される:論理的に物事を進める個人が求められる。
  • 存在価値は「何かをすること」にある:存在するためには何らかの役割や成果を出すことが求められる。


【農村の特徴】

  • 人口が少ない(過疎):人口が非常に少なく、社会の担い手が不足している。
  • 多役割だが質は重視されない:一人がいくつかの役割を担うが、それほど高い質は求められない。
  • 存在そのものが価値:大げさに言えば「存在していればいい」とされる。
  • 非論理的な部分が重要:全体の事情を理解する力が求められ、非論理的な部分が重視される。
  • 高度な能力は必要ないが、多様な能力がほどほどに求められる:村では、さまざまな能力が広く浅く必要とされる。

このように比較すると、かなり対比的に書かれていることがわかります。
都市は人口が過密であるために、競争が激しく、雇い主が有能な人材を確保しやすい状態です。つまり、「買い手市場」とは「雇用する側(企業側)に有利な状態」です。
一方、農村は人口が過疎であるために、都市のように質は重視されず、働ける人材がいるということに価値がある状態です。つまり、「売り手市場」とは「雇用される側(求職者側)に有利な状態」なのです。


■選択肢のまちがっている部分を見つける
このように、まずは自分の考えをしっかりともってから、選択肢を見るようにしていきましょう。すると、(ウ)と(エ)の選択肢のまちがいに気づくことができます。

(ウ) ✕企業や会社ができるだけ多くの人材を確保しようと努めること
→企業や会社はできるだけ多くの人材を確保しようとしているのではなく、多くの人材の中から優秀な人材を確保することに注力しているのでまちがいです。

(エ) ✕人々が自分は地域にとって有用な人物であると競ってアピールすること
→「地域」とは「農村」のことを指しています。有用な人物であるとアピールして競争に勝とうとするのは、都市の状況を指しているのでまちがいです。

選択問題は、どれも正しく感じてしまうこともあるので、まちがっている部分を見つけていくようにしましょう。


■正しい答えを選択する
あとは(ア)と(イ)のどちらが「買い手市場(都市)」のことか「売り手市場(農村)」のことかを考えていけば正答できます。

(ア) 数に限りがある就職口やキャリアを求めて競争すること
→これは、過密による競争について書かれているので、A 買い手市場(都市)のことを指している選択肢であると言えます。

(イ) 人の数に比べて、果たす役割や仕事がたくさんあること
→これは、人の数が少ない過疎の状態について書かれているので、B 売り手市場(農村)のことを指していると言えます。

このように、都市と農村の違いを明確にしていくと、正答を導くことができます。


[問5] ー線④「『人口減少社会のデザイン』の著者、広井良典」とありますが、彼は「人口減少社会」をどういう社会だと書いていますか。文章中の言葉を使って六十五字以内で答えなさい。

■問題文で(問われていること)を確認する
この問題で(問われていること)は、「彼は人口減少社会をどういう社会だと書いていますか」という部分です。どういう社会と問われているので、「○○な社会」と解答します。記述問題は、(問われていること)に対する答え方を確認することが重要です。必ず最初に確認するようにしましょう。


■(問われていること)に対する答えを本文から見つける
(問われていること)が確認できたので、その答えになる部分を本文から見つけていきましょう。広井氏の『人口減少社会のデザイン』の引用から、「人口減少社会」とはどのような社会と書かれているのか、探していきます。

『人口減少社会のデザイン』からの引用部分
 大きくとらえると、急激な人口増加の時代というのは、一言で表すとすれば日本人あるいは日本社会が「集団で一本の道を登る時代」だったと要約できるだろう。それは良くも悪くも”一本の道”であるから、教育や人生のルートなどを含めて多様性といったことはあまり考慮されず、文字通り画一化が進み、それと並行していわゆる集団の”同調圧力”といったものも強固なものになっていった。
 そのような強力かつ一元的なベクトル 〔=方向〕から人々が解放され、いわば坂道を登った後の広いスペースで各人が自由な創造性を発揮していける、そうした時代がまさに人口減少社会ととらえられるのではないか。

引用部分を読んでいくと、前半の段落は「人口増加社会」がどのような社会だったのか書かれています。後半の段落で「人口減少社会」について書かれているため、後半の段落をまとめればよいことに気づきます。すると、「そのような強力かつ一元的なベクトル 〔=方向〕から人々が解放され」「そうした時代がまさに人口減少社会ととらえられるのではないか」と、指示語が2つあります。この2つの指示語を明確にしてまとめると、記述を完成させることができます。

出題者は、指示語が正確に読みとれているか確認するために出題していると考えられます。


■指示語が指し示す内容を明確にする
まずは「そのような強力かつ一元的なベクトル 〔=方向〕から人々が解放され」という文に注目し、そのようなが指し示す内容を確認しましょう。この指示語は前半の段落の「人口増加社会」の内容を指しています。前半の段落で、「人口増加社会」は、「多様性はあまり考慮されない」「画一化が進んでいった」「集団の同調圧力が強固なものになっていった」時代であると書かれており、これが「強力かつ一元的なベクトル 〔=方向〕」であると考えられます。

そのような強力かつ一元的なベクトル 〔=方向〕
→多様性が考慮されず、画一化が進んでいったことにより、集団の同調圧力が強固になっていったこと


次に「そうした時代がまさに人口減少社会ととらえられるのではないか」という文に注目し、そうした時代という指示語の内容を明確にしましょう。指示語は直前の文を指していると考えられます。

そうした時代 
→人口増加社会の価値観から解放され、人々が自由な創造性を発揮していける時代


■(問われていること)に対する解答を完成させる
このように指示語を明確にすると、(問われていること)に答えることができます。最初に「○○な社会」と解答することを確認しました。「そうした時代がまさに人口減少社会」であると書かれているので、指示語を明確にすると「人口減少社会」は自由な創造性を発揮していける社会であると考えることができるのです。この(短い解答)を文末に配置すると、(問われていること)に対して明確に答えることができます。

さらに、「そのような強力かつ一元的なベクトル 〔=方向〕から人々が解放され」のそのようなは「人口増加社会」の内容を指していることを確認しました。つまり、「・・・・という人口増加社会から解放され、自由な創造性を発揮していける社会」と解答すれば記述をまとめることができるのです。

[正答]
さまざまなことについて画一化が進み、集団の同調圧力も強固だった人口増加社会から解放され、各人が自由な創造性を発揮できる社会。


【2024】四谷大塚「第4回合不合判定テスト」説明文まとめ

今回の説明文はどうだったでしょうか。
「人口増加社会」の価値観については、お子さんが理解しにくい内容であったと思います。主に高度経済成長期の概念が述べられており、経済的な豊かさを追求することに大きな価値が置かれたため、教育や人生設計などの価値観も画一的であった時代です。お子さんが少しでも理解できるように話をしてあげたいですね。

NHK for schoolの動画教材がわかりやすかったので、参考にしてみてください。

高度経済成長の光と影 | 10min.ボックス  日本史 | NHK for School
高度経済成長を迎え先進工業国に飛躍した日本。一方で公害などさまざまな問題が起こった。21世紀、どんな道を進もうとしているのだろうか。

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