【サピックス・5月度マンスリー確認テスト】6年生国語[大問4]物語文の難問を解説

2024年5月実施、 サピックス6年生「5月度マンスリー確認テスト」の物語文を解説します。

今回の物語は『どんぐりひろい』(著:安東みきえ)
友人関係で悩んでいた主人公のチエが、茜(あかね)との交流の中で成長していく物語です。

今回は物語に登場する「ねこ」と「どんぐり」が象徴しているものを読みとる問題が難問でした。
「ねこ」が表すものを読みとる[問7]
「どんぐり」が表すものを読みとる[問8][問9]を、解説します。

どのような視点で読めば象徴しているものを正しく理解できるのか、解説していきます!

[問7]「ねこ」が象徴しているものを読みとろう

「ねこ」はどのような存在なのか

[問7]選択問題の【問いの中心】は
「ねこ」はどのような存在として描かれていますか と問われている部分です。
どのような存在か読みとるために、比喩表現に注目しましょう。

■「ねこ」のしま模様の地図が表しているものを考える
主人公が「ねこ」のしま模様を見て、
「そうだ、地図。これはなぞの地図だ」と、しま模様を地図に例えています。

このような比喩表現には、必ず線を引きましょう。
比喩表現は、作者が物語のテーマや主張を読者に印象づけるために使う技法です。

比喩表現が何を表すか考えることで、物語の重要な要素を読みとることができます。

では、地図が表しているものとはなんなのでしょうか?
地図とは「道を示し、目的地に導いてくれるもの」です。

「麗奈ちゃん」の言葉で茜を裏切ってしまったと思い、自信を無くしてしまっている主人公。そのような心情であった主人公が、正しい道を選択することを示唆してる場面だと解釈することができるのです。

■「ねこ」と出会った主人公の心情が変化したところをおさえる
【マイナス心情】であった主人公が、「ねこ」と出会い、心情が変化した部分に注目しましょう。

主人公が「ねこ」のしま模様の地図をたどっていきながら、以下のように思います。

(P12・16行目)
 とちゅうで道にまよった。どの道をえらんだらいいのだろう。行きどまりにならないように、まちがったところに行かないように、よく考えて道をえらぼう
 どの道が正しいのか、自分でさがすしかないのだから。

自分に自信を持てず、周りに流されていた主人公が、ねこのしま模様を見て、自分の信じた道を選択しようと思ったことが読みとれます。

「ねこ」は、地図のように道を示した存在であると読みとることができますね。

選択肢からまちがっているものを見つける

選択問題のコツは、まちがっている部分をみつけることです。
最もらしい選択肢にまどわされてしまうので、明らかにまちがっている部分を見つけるようにしましょう。「ねこ」がどのような存在なのか正確に読みとれていたら、まちがった部分を見つけることができます。

ア … ✕不思議な景色を見せることで
→「ねこが不思議な景色を見せた」という記述はないので誤答

ウ … ✕切れこみのある耳をどこかに行っていいシルシとして見せることで
→切れこみのある耳でなく、地図のようなしま模様を見て主人公の心情は変化しているので誤答。

エ … ✕チエに反省させた
→チエは、ねこが表れたことで「自分の信じた選択をしよう」と思っているので誤答。

このように見ていくと、「ねこ」が行動するきっかけをあたえたと記述しているイが正答であるとわかる。

[問8]「どんぐり」が象徴しているものを考え解答しよう

「どんぐり」が表しているものとは

子どもたちは、どんぐりにどのようなイメージをもっているでしょうか。都会の子はふれる機会もあまりないかもしれませんね。

「どんぐり」のイメージを思い浮かべながら読みことができるかが、重要なポイントです。

「どんぐり」と聞いて思い浮かぶ慣用句といえば「どんぐりの背くらべ」です。
どんぐりは「あまり変わりばえのしないもの」というイメージがあるのです。

そんなどんぐりの中から、一番おいしいどんぐりを見つけている場面なのですが
それぞれのどんぐりの違いに主人公と茜が気づくところがたくさん描かれています。

(P13・15行目)「どんぐりって、こんなにちがうんだね」
(P13・19行目)くらべて見てもびみょうなちがいがあり、なかなか見分けがつけられない。
(P13・20行目)「どれが一番のやつか、よくわかんないや」
(P13・21行目)「うん。どれもにてるし、どれもちがう」

つまり、均一なイメージがあるどんぐりにも、それぞれ違いがあるのだということが、描かれているのです。そこから、どんぐりは「ひとつひとつの個性を表すものの象徴」と解釈することができるのです。

選択肢から正答を選ぶ

■選択肢の間違っているところを見つける
まずは[問7]と同様、選択肢の間違っているところを見つけていきましょう。

イ … ✕選択肢の文章全体
→「見た目が悪いどんぐりが一番」という内容は、この後の場面なので、茜が紙をやぶった行為が表すものではない。

エ … 幼い子どもはすぐに投げ出すあきっぽい性格
→粘り強く探しても見つからないから紙を破ったので誤答。

このように、イとエが誤答であることはすぐに分かります。


■2つの選択肢のちがいに注目する
選択肢を2つにしぼった後は、そのちがいに注目します。
アとウは、前半の文章はほとんど同じ意味なので、ちがいがあるのは後半です。

ア … ひとつの基準で優劣をつけるのは意味がない
ウ … 自分の価値観で人を非難してはいけない

このように比べると、前述したように、どんぐりは「ひとつひとつの個性を表すものの象徴」であることから、アが正答であると判断することができるのです。

[問9]「どんぐり」の役割を記述しよう

[問8]で、どんぐりは「あまり変わりばえのしないもの」の象徴であり、
茜の行為が「人はそれぞれ特徴があり、ひとつの基準で優劣をつけることに意味はない」ことを意味しているとおさえることができたので、それを頼りに「どんぐりの役割」について考えていきます。

「本文全体をふまえて」解答する問題の解き方

問題に「本文全体をふまえて説明しなさい」と書いてあります。
このように記載されている問題は「本文の前半から解答する部分を見つける」ことが定石です。

まずは、本文の前半から「どんぐり」がどのような役割なのか見つけましょう。

どんぐりが奇跡的に回転したことで、主人公は「茜」と出会うことになります。
つまり、どんぐりが主人公と「茜」をつなげる役割をはたしていることになります。

しかし、これだけを回答するのでは不十分です。さらに、どんぐりが主人公に及ぼした役割を考える必要があります。

「どんぐり」によって主人公の心情がどのように変化したか読みとる

「どんぐり」によって、主人公が新しい価値観に気づく場面があります。
本文の後半、茜が絵本の登場人物・やまねこの言葉をまねて言う場面です。

(P14・10行目)
 だれが一番りっぱなのか、きそいあうどんぐりたちにむかって、やまねこがつげる場面を茜はまねていた。
 チエは笑って、とびきりいびつなどんぐりを空にほうりあげてみた。
 一番だめなやつが一番?もしかしたらそんなことがあるかもしれないね。そんなことがあったらいいね。

「とびきりいびつなどんぐり」とは、自分に自信がもてなかった主人公自身を表しています。
そんな自分自身が、「一番になることがあるかもしれない・そんなことがあったらいい」と思っています。

つまり、主人公はどんぐりの存在によって、自分の個性を認め、自分の気持ちに従って行動することの価値に気づいたということになります。

「どんぐり」が表す2つの役割をまとめる

このように、本文の前半と後半で、どんぐりに2つの役割があることが読みとれます。

どんぐりが表す2つの役割
①主人公と茜をつなげる役割
②主人公が自分の個性を認め、自分の気持ちに従って行動することの価値に気づかせる役割

この2つを記述してまとめられていることがポイントです。

今回の問題で難しかったところは、「どんぐり」が様々な個性を肯定する役割として描かれていると読みとることです。

象徴するものが主人公にどのような影響を与えたのか読みとることが、正しく解答するカギになります!

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