【2024年度入試問題】攻玉社中学校・国語[大問4]中堅~上位校の物語を解説

攻玉社中学校の2024年度入試問題を解説します。
攻玉社中学校は、150年を超える歴史のある学校です。創立は文久3年(1863年)。航海術などを教える「攻玉塾」として開設されました。

2024年度の物語文は『あと少し、もう少し』(著:瀬尾まいこ)
寄せ集めの6人で中学最後の駅伝を走り、襷を繋ぐ青春ストーリー。区間ごとの走者視点で襷を繋ぐドラマが描かれています。これまでに市川中・品川女子学院中・専修大松戸中などで出題されました。
松尾まいこさんの作品は「そして、バトンは渡された」「夏の体温」「卵の緒」など、これまでにも中学入試で多く取りあつかわれています。

今回は[問8][問9]の選択問題を解説します。

選択問題の必勝法「解き方の手順」をマスターしよう!

「4つの手順」で正答率アップ

選択問題は「解き方の手順」を覚えれば、正答率がかなり上がります!

(手順1)【問いの中心】を確認する。
(手順2)本文から答えの手がかりを探す。
(手順3)選択肢を句読点などで区切る。
(手順4)区切った文章に✕をつけていく。

まずは(手順1)【問いの中心】を確認して、(手順2)まずは答えの手がかりを自分で考えます
はじめから選択肢を見てしまうと、最もらしい文章に表現に惑わされてしまうからです。
自分の考えをもった上で、選択肢を見るようにしましょう。

そして、(手順3)(手順4)で区切った選択肢に✕をつけていきます。
ポイントは間違いを見つけることです。
子どもは選択肢を読むと正しいと思っていまいがちなので、「間違いを探す」と指導をしましょう。

以上の手順を[問8][問9]で具体的に確認していきます。

[問8]―線⑥「腕を大きく振った」時の主人公の心情を選ぶ

■(手順1)【問いの中心】を確認する
問題文に「どのようなことを表現していますか」とあります。
そこで、「腕を大きく振った」時の主人公の気持ちを解答する問題であると分かります。

■(手順2)本文から答えの手がかりを探す。
「腕を大きく振った」主人公の心情は、プラス心情なのかマイナス心情なのか考えます。
すると、―線⑥の近くには、プラス心情がたくさん書かれています。

〔プラス心情が表れている部分〕
・いつもの調子で引き受けたからこそ、今ここにいられるのだ。
・自分の残っている力を確認した。いける。
・ペースを上げても走り切れる。
・上原に褒められたように、思い切りのいい走りをしよう。

このような文章から、主人公は前を走る集団を目指し、ペースを上げていこうとしていることがわかります。

■(手順3)(手順4)選択肢を区切り、間違いを見つけていく
ここで初めて選択肢を見てみましょう。

すると、選択肢のイ・エ・オは、明らかに違う部分が見つかります。

イ … ✕普段通りおどけてふるまえるようになった。
→これからペースを上げて走ろうとしているので誤答

エ … ✕過度な自信がもてるようになり
→前半の場面で不安と戦いながら走っていたことを考えると「過度な自信」は言い過ぎ

オ … ✕たとえ襷がつながらなくても全力で走る決意をもった
→最後まで走れる体力が残っていることを確認してペースを上げているので誤答

このように見ていくと、正答はアかウであることがわかります。

■しぼった選択肢の違いに着目する
選択肢がしぼれたら、2つの選択肢の違いに注目します。

ア とにかく残りの1キロ弱を全力疾走するために、これまでの抑えた走り方をやめて持てる力を出し切ろうとする必死さを表している。

イ 集団に抜かれてしまったことで不安な気持ちに押しつぶされそうになったが、自分らしくあることの大切さに気付いた心情の変化を表している。

2つを比べると、アは「必死さ」ウは「心情の変化」を表しているという部分が違います。
「腕を大きく振る」という行為が「必死さ」を表しているのか、「心情の変化」を表しているのか。

どちらが相応しいか(手順2)で読み取ったことをもとに考えると、
「力を出し切ろうとする必死さ」を表していると書かれたアが正答であるとわかる。

2つにしぼった選択肢を比べると、違いがより明確になり、正答が選びやすくなります。

[問9]―線⑦「身体も心もすっとほぐれた」主人公の心情を選ぶ

[問8]と同じ要領で、[問9]も考えていきましょう。

■(手順1)【問いの中心】を確認する
問題文に「この描写はどのようなことを表していますか」とあるので
「身体も心もすっとほぐれた」時の主人公の気持ちを解答する問題であると分かります。

■(手順2)本文から答えの手がかりを探す。
―線部の主人公の心情は、プラス心情なのかマイナス心情なのか考えます。
すると、直前の文にプラス心情が書かれています。

渡部は手早く襷を受け取って、すぐさま駆け出した。これでもうだいじょうぶだ。

なぜ、主人公は「だいじょうぶだ」と安心しているのでしょうか。
―線⑦も含めた直後の文に「渡部に襷をつないだとたん、俺の身体も心もすっとほぐれていった」とあります。「襷をつないだとたん」ということは、襷を無事に渡部につなげたことに安心していることがわかります。

―線部がある文章は、一文全体に―線が引いてあると考えて、取り組むようにしましょう。

■(手順3)(手順4)選択肢を区切り、間違いを見つけていく
ここで、選択肢の間違っている部分を考えていくと、ア・イ・ウは誤答であるとわかります。

ア … ✕喪失感 → 主人公はプラス心情なので誤答

イ … ✕最終結果が悪くても責められることがなくなったジローの解放感
→(P8・3行目)「俺らしくやれば渡部は認めてくれるはずだ」とあるので、結果が悪くて責められることを、主人公は心配していない。

ウ … ✕周囲からの声援が力になることを体験した
→渡部に襷をつないだ瞬間に「ほぐれていった」ので、声援を受けている場面の心情ではないから誤答。

このように見ていくと、正答はエかオであることがわかります。

■しぼった選択肢の違いに着目する
選択肢がしぼれたら、先ほどと同様、2つの選択肢の違いに注目します。

2つの選択肢の違いは

エ 一度も諦めずに走り抜いたジローの充実感
オ 襷を無事につなぐという役目を果たしたジローの安堵感

主人公は、渡部に襷を渡した瞬間に「これでもうだいじょうぶだ」と安心しているので、
オの安堵感が最も適当な選択肢であるということになります。

選択問題の解き方 まとめ

今回は攻玉社中の入試問題で、選択問題の解答の仕方について解説していきました。

選択問題を解く手順がわかったでしょうか?

(手順1)【問いの中心】を確認する。
(手順2)本文から答えの手がかりを探す。
(手順3)選択肢を句読点などで区切る。
(手順4)区切った文章に✕をつけていく。

手順通りに解いていけば、ムダな時間も省けて効率的です。

手順を覚えられるまでくり返し確認しながら問題を解いていきましょう。


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