【2024】サピックス 12月マンスリー確認テスト(5年) 国語[大問3]説明文を解説

今回の説明文は『知図を描こう―あるいてあつめておもしろがる』(著:市川力)
現代社会の変化のスピードが速まる中、自分らしい生き方を見つけることが求められるとしばしば語られます。しかし、「好きなことがない」「得意なことが見つからない」と悩む人も少なくありません。この文章では、「好きなこと」を探すよりも大切なアプローチについて、筆者の考えを読みとる力が求められます。

文章の概要

要約

筆者は、「好きなこと」や「得意なこと」を初めから決める必要はないと説きます。むしろ、あちこち寄り道しながら「なんとなく気になる」好奇心を大切にすることで、新たな興味や能力を見つけられると述べています。好奇心はささいな違和感や驚きから生まれるもので、それを日々の生活で見逃さずに行動に移すことの重要性を述べています。変化の速い社会に柔軟に対応するには、好奇心をベースに試行錯誤を続ける姿勢こそが重要であると強調しています。

難しい語句の解説

  • 指示待ち:他の人から言われたことだけを待って行動すること。自分から考えて動かない状態を指します。
  • 袋小路(ふくろこうじ):先に進めない行き止まりのこと。ここでは「解決策が見つからない状態」の例えとして使われています。
  • 一芸を極(きわ)めた:特定の分野や技術を深く追求し、非常に高いレベルに達した状態を指します。例えば、スポーツ選手や職人など。
  • 効率(こうりつ):できるだけ少ない時間や労力で成果を上げることを意味します。無駄を省いて目標を達成する考え方です。
  • 矛盾(むじゅん):2つの事柄が食い違い、つじつまが合わないこと。たとえば、「自由でいたいけれど、規則がないと不安」といった相反する感情を抱くことを指します。
  • 認知(にんち)バイアス:これまでの経験や思い込みによって、物事を偏った見方で判断してしまうこと。たとえば「好きなことだけが正しい」と思い込み、他の可能性を見逃してしまうことです。
  • プロセス:目的を達成するまでの過程や進行のこと。ここでは「目標を決めず、寄り道しながら進む方法」を指しています。
  • 先入観(せんにゅうかん):実際に経験したり確認したりする前に、あらかじめ持っている偏った考え方やイメージのことです。
  • 根源的(こんげんてき):物事の一番基本になること。ここでは「人間が本来持っている学び方」の意味です。
  • 実体験(じったいけん):実際に自分が経験したこと。教科書やデータではなく、自分で試したり観察したりすることです。

重要問題解説 問5・問8・問9

今回は、説明文の構成を読みとり内容を理解することが求められる(問5)、筆者の考えを読みとる問題(問8)(問9)を解説していきます。

(問5)選択問題 ―線③「この状況」とありますが、ここでの大人の置かれている状況の説明として、最もふさわしいものを選びなさい。

■問題文で(問われていること)を確認する
この問題は、「大人の置かれている状況の説明として」ふさわしいものを選ぶ問題です。「大人の置かれている状況」は、―線部の前の段落に書かれていますが、これを正確に読みとるにはP4の構成に注目しなければいけません。以下で解説していきます。

段落ごとに書かれていることを整理しながら読むことを意識していきましょう!


■文章の構成を理解する
P4の構成を理解するため、5行目~の文を段落ごとに見ていきましょう。

[本文](P4・5行目~)
 大事なことは、あらかじめ「好き・得意」を定めることではありません。そうなると「好き・得意」が決まらないと行動できなくなってしまいます。最初から「好き・得意」を持つことより、とりあえず面白そうだからやってみよう!というフットワークの軽さがポイントです。何かを極めた人のインタビューが私たちに教えてくれるのはそういうことです。

筆者は「好き・得意」を定めるのではなく、とりあえずやってみよう!と行動することが大切だと述べています。これをベースに、P4・8行目~の論の進め方を整理してみましょう。
※便宜上、段落に数字を振りました。

[本文](P4・8行目~)
①「好き・得意」は目指すべき「目標」と言い換えることができます。・・(略)・・。しかし、この先どうなるのか予測することが難しく、変化するスピードの速い時代を生きぬいてゆくには、「目標」を定められないプロセスを歩んでゆかなければなりません

②こうしたプロセスを進むのは、とても不安です。私たちの心の中には「こんなことしてなんの『意味』があるのだろうか?」という気持ちがむくむくとわいてきて、・・(略)・・。

一方で意味や効率にしばられているのも息苦しいと感じています。・・(略)・・。意味が見えないのは不安だけど、「○○のため」にしばられてばかりだと残れてしまう、という矛盾した感情を抱えて、私たちは日々生活しているのです。

ここでは、筆者が「好き・得意」を定めてはいけないと考える理由が述べられていることが理解できたでしょうか。青マーカーは逆接の接続語で、これ以降に筆者の考えが書かれています。筆者の考えを、①~③の段落ごとに以下のように整理しました。

①②と③が、矛盾した関係になっていることを、このような図で理解させてあげてください。


■「大人の置かれている状況」を確認し、正答を選ぶ
上記の図のように「悩んでいるのは大人も同じ」だと書かれているので、「大人の置かれている状況」が理解しやすくなります。大人は③の価値観で子どもにせまりますが、実際には①②で示されている意味と効率の世界から抜け出せていないと書かれています。
これをもとに、まずは選択肢のまちがっている部分を見つけていきましょう。

[選択肢のまちがっている部分]
(ア)✕自分らしい生き方を目指すことをあきらめて
(ウ)✕大人自身は効率的で目的が明確な生き方を目指している
(エ)効率が悪いと考えて自分の気持ちを押し殺しながら過ごしている
→上記で確認したように、大人も意味や効率にしばられない世界の価値観を理解しているが、現実的な状況を考えるとそこから抜け出せない状況になっているのでまちがい。

(エ)✕意味のないことに自分らしさが表れる
→「意味や効率にしばられるのは苦しい」と感じているのであり、意味のないことに自分らしさが表れるのではない。


このように考えると、正答は(イ)となります。

[正答](イ)
目指すべき「目標」を定めずに生きていく不安に耐えられず、意味や効率を重視する生き方を選んでしまっている状況

(問8)選択問題 ―線⑥「学んだ知識を組み合わせて学ぶ」とありますが、こうした「学び」に対する筆者の考えとして、最もふさわしいものを次の中から選びなさい。

■問題文で(問われていること)を確認する
この問題は、「学びに対する筆者の考え」を選ぶ問題であることを確認しましょう。筆者の考えが書いているところを注意深く読んでいきましょう。


■本文から筆者の考えを読みとる
筆者の考えを読みとるために、本文の―線部付近を確認してみましょう。

[本文](P5・21行目~)
 「いつもと同じだな」と思えることにちょっとした違いを見出し、「関連がなさそうだな」と思えることに共通する何かを見出すときに作動しているのが「好奇心」です。小さな不思議を感じとるのが「好奇心」と言えるでしょう。「好奇心」をベースにした 学びは、私たちヒトの根源的な学び方です。赤ちゃんや幼児が新しい能力を身につけてゆけるのは、「あれ?」「おや?」と思ったことに敏感に反応し、あれこれ試してみるからです。年齢が進んでくると、学んだ知識を組み合わせて学ぶことが可能になります。好奇心ベースの実体験がなくても、教科書や本だけで知識を増やしてゆけるのです。

 これはとても効率のよい学び方ですし、決まった知識ややり方を受け継ぐにはふさわしいでしょう。しかし今、私たちに必要なのは、これまでの決まりきったやり方を手放して、激しく変化する現実社会に対応してゆくことです。そのためには、新たに感じとった実体験をベースにしなければなりません。どんなデータや事実を集め、どんなやり方をしたらよいかがわからない状況で、 とりあえず集めたり、やってみたりを積み重ねるのです。そのときに活躍するのが、ちょっとしたことを「面白いぞ」と感じる「好奇心」なのです。

「学んだ知識を組み合わせて学ぶこと」は「好奇心ベースの学び」と対照的な学びとして書かれていることがわかります。
そして、逆接の「しかし」以降に筆者の意見が書かれています。筆者は「学んだ知識を組み合わせて学ぶこと」にも利点があるとしながら、「激しく変化する現代社会に対応するには、このやり方では対応できない」と述べているのです。


■選択肢のまちがいを見つける
選択問題は、選択肢のまちがっている部分を見つけていくことが大切です。

[選択肢のまちがっている部分]
(イ)
✕実体験に頼らない「学び」は、子どもには不要
→本文では、「実体験に頼らない学び」を完全に否定していない
✕好奇心を失いつつある大人には不可欠
→「好奇心を失いつつある大人」にのみ不可欠だと限定しているわけではない

(ウ)✕実体験が不要な「学び」は、知識ややり方を受け継ぎ発展させていく点において最も優れた方法
→「実体験が不要な学び」は知識ややり方を受け継ぐ点で評価しているが、変化の激しい現代に対応していくために「発展させていく」には、実体験をもとにした学びが必要だと述べている

(エ)✕現代においては役に立たないと考えている
→実体験を取り入れることが重要だと述べていますが、従来の学びを完全に否定しているわけではない

選択肢(ウ)の「発展させていく」ことは、既存の学び方では難しいと述べられていることに気づけたでしょうか?

「学んだ知識を組み合わせて学ぶ」ことについて、筆者は以下のように考えています。
・知識ややり方を受け継ぐ点で価値がある
・変化の激しい現代に対応するのは難しい
つまり、(ア)が正答であると分かります。

[正答](ア)
実体験を必要としない「学び」にも一定の価値があるとしながら、今日の社会に対応しきれないものだと考えている。


(問9)選択問題 ―線⑦「そのときに活躍するのが、ちょっとしたことを『面白いぞ』と感じる『好奇心』なのです」とありますが、ここでの筆者の主張として、最もふさわしいものを選びなさい。

■問題文で(問われていること)を確認する
この問題は、「筆者の主張」を読みとる問題であることをおさえておきましょう。そのために、まずは―線部の言葉に注目していきましょう。

―線部に指示語やキーワードがある場合は、それを明確にしていきましょう。

■―線部の指示語やキーワードに注目する
指示語の指しているものを明らかにしたり、キーワードの言葉がどのような意味なのか確認したりしていくことが大切です。その視点で、本文に注目してみましょう。

[本文](P5・21行目~)
 「いつもと同じだな」と思えることにちょっとした違いを見出し、「関連がなさそうだな」と思えることに共通する何かを見出すときに作動しているのが「好奇心です。小さな不思議を感じとるのが「好奇心」と言えるでしょう。・・・(略)・・・

 これはとても効率のよい学び方ですし、決まった知識ややり方を受け継ぐにはふさわしいでしょう。しかし、今、私たちに必要なのは、これまでの決まりきったやり方を手放して、激しく変化する現実社会に対応してゆくことです。そのためには、新たに感じとった実体験をベースにしなければなりません。どんなデータや事実を集め、どんなやり方をしたらよいかがわからない状況で、とりあえず集めたり、やってみたりを積み重ねるのです。そのときに活躍するのが、ちょっとしたことを「面白いぞ」と感じる「好奇心」なのです

指示語「そのとき」が指しているのは、その直前の青マーカーの内容です。青マーカー部分は実体験をベースとした問題解決能力であると言い換えられます。つまり、指示語の内容を明らかにすると「実体験をベースとした問題解決をするときに活躍するのが、好奇心である」と言い換えることができます。

次に、筆者が「好奇心」をどのように定義づけているか確認しましょう。赤マーカーの部分に「好奇心」を定義づけている文があり、その次の文に「小さな不思議を感じとるのが好奇心と言えるでしょう」と、筆者の意見も読みとることができます。


■選択肢のまちがっている部分を見つける
上記で読みとった内容をもとに、選択肢のまちがっている部分を見つけていきましょう。

[選択肢のまちがっている部分]
(ア)
✕効率を求める日常を送ることに心を奪われている
→(問5)で確認したように、効率ばかり求めることにも違和感を感じていると述べられているのでまちがい
✕物事をゆっくりと眺め丁寧に過ごす生き方を再度目指す必要がある
→新たに感じとった実体験をベースに、激しく変化する社会に対応することが求められているのでまちがい

(イ)✕自分が得意なことに自信をもって挑戦することで
→「得意なこと」だけに固執することで、新しいことに挑戦する思考が損なわれることの危険性が述べられているのでまちがい

このように、(ア)と(イ)は、今まで読みとった内容からまちがいを見つけられます。
(ウ)と(エ)の選択肢で悩んた人が多いのではないでしょうか。2つの選択肢をくらべてみましょう。


■微妙な選択肢をくらべる
2つの選択肢で迷ったら、2つの選択肢の違いを比べてみましょう。

(ウ)変化の激しい現代社会に対応するには、これまでの方法に頼るのではなく、様々な経験をしながら、差異に気がつける繊細さを持つのが重要である

(エ)現代社会に対応するには、知識を効率よく学ぶことよりも、小さな変化を見逃さない意識を持ちながら、積極的に物事に取り組むことが求められる

選択肢の前半部分は内容が似ており、まちがっているところはなさそうです。太字にした選択肢の後半部分をくらべてみましょう。

(ウ)も(エ)も、本文にあるように、「小さな不思議を感じとる」好奇心の大切さが述べられています。しかし、好奇心をベースに体験したことを活かしながら物事に取り組むことの大切さが述べられているのは(エ)だけです。筆者は、好奇心をベースに様々なことに挑戦する大切さを述べているため、最もふさわしい選択肢は(エ)であると言えます。

微妙な選択肢は2つの違いを比べることで、相応しい選択肢を選べるようになっていきます!

【2024】サピックス・12月マンスリー(5年) 説明文まとめ

今回の説明文はどうだったでしょうか。
読み方や解き方の方法を確認し、次回にいかせるように、お子さんと確認してみてください。

  • 文章の構成を整理しながら読む
  • 逆接の接続語の後の、筆者の意見に注目する
  • ―線部付近の指示語の内容を明らかにする
  • キーワードの定義を確認する

また、説明文の内容を理解するには、お子さんがこの説明文を読んで意見をもてることが重要です。次のように、説明文の内容について、お子さんと話をしてみてください。

あなたが「好き・得意」と思っていることはなに?

お子さんの「好き・得意」を聞いていてあげてください。その上で、次のように質問すると、より効果的です。

筆者は「好き・得意」だけでなく、好奇心をもっていろいろなことい挑戦する大切さを語っているけど、あなたはどう思う?

このように質問することで、お子さんが説明文に対して意見を持つことができるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。

この説明文を読んで、私も小一の娘が興味をもったことを応援し、一緒に楽しむ姿勢を大切にしようと思いました。

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